社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「はい……」

すると彼女は、ふっと笑みを浮かべ、私の腕をポンと軽く叩いた。

「嫌ね。そんな顔しないで。ただ懐かしいのよ。昔、一緒に仕事していた頃を思い出しただけ。」

その言葉に少しだけ安堵したけれど、胸の奥に残るざわめきは消えなかった。

“懐かしい”と言えるほど、直哉さんとどんな時間を過ごしてきたのか。

想像するだけで苦しくなる。

そして私は、ミーティングルームから出て自分のデスクに戻った。

「遥香、どうだった?」

弥生がすぐに駆け寄ってくる。

「社長の話で盛り上がったわ。」

努めて平静を装ったけれど、声が少し震えていた。

「やっぱり?」

弥生は、周囲を気にしながら私の耳元で囁いた。

「社長と篠宮部長、付き合ってた事があるんだって。」
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