社長、社内恋愛は禁止のはずですが
「えっ……」

足元がふらつくような衝撃が走った。

あの自然な名前呼び。

同期だからと思い込んでいたけれど、そうじゃなかったんだ。

胸の奥がチクリと痛む。

「なんかさ、目の前でいちゃいちゃされるのかな。」

弥生は苦笑まじりに言ったけれど、私には冗談に聞こえなかった。

直哉さんが、篠宮部長と――。

その想像だけで胸が張り裂けそうになった。

その日の夕食は、魚を焼いたのに焦がしてしまった。

「どうした?遥香らしくない。」

直哉さんが背後に立ち、そっと私を抱きしめてくれる。

その温もりに胸が締めつけられた。

「もしかして、澄玲に何か言われたのか。」

澄玲……その名前を出されただけで心がざわつく。

私は焦げた魚を皿に盛りつけ、ダイニングへと運んだ。

「遥香?」

直哉さんもキッチンから出てきて、私をじっと見つめる。
< 177 / 273 >

この作品をシェア

pagetop