社長、社内恋愛は禁止のはずですが
小さく首を振った。

まさか高峰社長が、自分で掲げた規則を打ち破ってまで恋愛するなんて――そんなこと、あるはずがない。

「……でもさ。」

南條がじーっと私を見つめてくる。

「もしかして水城って、鈍感?」

「はい?」

きょとんと返すと、彼は真顔になった。

「あそこまでやられて、特別感ないの?」

胸がチクリと痛んだ。

だって、心のどこかでそう思ってしまっていたから。けれど口にはできない。

「……そういう期待は、しないようにしてるの。」

俯いたまま答えて、私は自分の席に腰を下ろした。

そう。自分を好きかどうかなんて、考えない方がいい。

期待してしまえば、裏切られたときに傷つくのは自分だから――。

その時だった。岸本さんが私のデスクに歩み寄ってきた。

「この企画なんですけど、やり直ししてもらえますか?」

突然の言葉に思わず南條を振り返り、「じゃあ、また後で」と告げて席を立つ。
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