社長、社内恋愛は禁止のはずですが
静かな反発に、胸がちくりと痛んだ。けれど――今ここで甘やかすわけにはいかない。

私はそっと企画書を返した。

「加藤さん、気持ちはわかる。でもね、順番があるでしょ。」

きっぱり告げると、彼女は悔しそうに唇を結んだ。

その姿を見て、胸がざわつく。

――これは試練だ。彼女を成長させるためにも、今は厳しくするしかない。

南條の新規案件も、いよいよ佳境を迎えていた。

けれど私は、新しいプロジェクトにかかりきりで――正直、手が回らない。

「ねえ、弥生。手伝ってもらいたいことがあるんだけど。」

簡単な図表をまとめるだけの案件。

でも、これで南條の想いが左右されるのだから、信頼できる人に任せたい。

だが弥生の返事は意外なものだった。

「ごめん。今、手がいっぱいで。」

「そっか……ごめん」

胸の奥が少し沈む。
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