社長、社内恋愛は禁止のはずですが
その言葉に、心の奥で黒いものが疼いた。

「……何で確認もしないで、勝手に約束するの?」

思わず声が強くなる。

「ごめん。いつもだったら、とっくにできてる時だったから。」

――いつもだったら。

その一言が胸に突き刺さる。

私はもう、“いつもの私”じゃないのだろうか。

唇を噛みしめ、ぐっと顔を上げる。

「……分かった。明日に間に合わせるね。」

無理に笑みを作って答えると、南條はほっとしたように肩を下ろした。

けれど私の胸の奥には、どうしようもなく重い痛みが残っていた。

私は南條案件を仕上げるために、今日も残業をしていた。

はっきり言って、身体は限界に近い。

先日も遅くまで残ったばかりで、疲労は抜けていない。

でも――そんなことは言っていられない。
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