社長、社内恋愛は禁止のはずですが
その言葉が出た時は、速やかに帰れという意味。

けれど私は立ち上がり、思わず彼の元へ駆け寄っていた。

「すみません。もう少しだけ……お時間ください。」

「水城……」

社長は私の顔を見て、わずかに眉を寄せる。

この前も残業していたことを、きっと覚えているのだ。

「明日までに必要な企画書なんです。」

必死に伝えると、彼は黙って立ち上がった。

「……見せてごらん。」

えっ、と息をのむ間もなく、社長は私のデスクへと足を運ぶ。

「高峰社長、もう少しで終わりますので。」

椅子に腰掛け直しながら説明する私の横に、社長の影が落ちる。

画面に映る企画書を覗き込み、彼の気配がすぐ近くにあった。

その距離に、心臓の鼓動がどんどん速まっていく――。
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