社長、社内恋愛は禁止のはずですが
背筋を伸ばす姿に、やっぱり彼は社長なんだと実感する。

「今日は遥香の“特別な顔”も見れたし。それで満足だ。」

余裕を見せるように微笑まれ、顔が一気に熱くなる。

「そ、そんな言い方……」

両手で頬を覆って俯くと、彼の低い笑い声が優しく夜に溶けていった。

夜中だというのに、社長はわざわざ私を自宅まで送ってくれた。

玄関前で降りると、どうしても言葉が溢れ出す。

「あの……泊まって行きませんか?」

口にした瞬間、心臓が飛び出しそうだった。

社長の目がぱちくりと瞬く。

「寝る時間を確保しないと、社長が倒れちゃいます」

必死に理由をつけ足すと、ふっと抱き寄せられ、唇が触れ合った。

「ありがとう。でも……泊まったら、今夜は眠れなくなっちゃうよ。」

「えっ……⁉」

耳元で囁かれた甘い声に、顔が真っ赤になる。

「また今度ね。」

軽く額に口づけを落としてから、社長は車に戻っていった。

――優しい。ちゃんと紳士でいてくれる。

その背中を見送る胸の奥が、じんわりと熱くなる。

ああ、またひとつ。もっと社長のことを、好きになってしまった。
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