大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。
第196話 行き先を、まだ知らないまま
朱里は、駅の改札を抜けたところで立ち止まった。
スマートフォンの画面には、嵩からの短いメッセージ。
《少し歩くけど、いい?
前に話した、あの場所》
“あの場所”。
それだけで、胸の奥が静かに鳴った。
(覚えてたんだ)
具体的な名前はない。
でも、どこかは分かる。
仕事で泣きそうになった日。
「大嫌い」と言う元気すらなくて、
ただ黙って隣に立ってもらった場所。
朱里はスマートフォンをポケットにしまい、歩き出す。
駅前の明るさを抜け、
人通りの少ない道へ。
足音が、自分のものだけになる。
(……逃げたいわけじゃない)
でも、軽くもない。
今夜、嵩は何かを話す。
それだけは分かっている。
転勤の話かもしれない。
それ以上かもしれない。
それ以下で終わるかもしれない。
全部、あり得る。
朱里は、自分の手を見た。
少し震えている。
(怖い)
正直な感情が、遅れてやってくる。
言葉を選ぶこと。
言わないことを選ぶこと。
それは、昨日までの自分がやっと辿り着いた場所だった。
でも今日は違う。
今日は、
相手の言葉を受け取る側だ。
(ちゃんと、聞けるかな)
途中、信号待ちで立ち止まる。
赤。
向こう側に、小さな公園が見える。
街灯がひとつ。
ベンチがふたつ。
記憶と、現実が重なる。
朱里は息を吸い、ゆっくり吐いた。
(全部は受け止めなくていい)
美鈴の言葉が、ふと浮かぶ。
──決めない選択も、逃げじゃない。
──今のあなたが壊れないことが、一番大事。
朱里は、歩き出す。
信号が青に変わる前から。
“急がない”と決めた足取りで。
公園の入口で、立ち止まる。
まだ、嵩の姿は見えない。
それが、少しだけ救いだった。
(……よし)
朱里は、ベンチの前で立ったまま、空を見上げる。
雲が、ゆっくり流れている。
何も決まっていない夜。
でも。
ここまで来た自分は、
確かに昨日より前にいる。
ポケットの中で、スマートフォンが小さく震えた。
朱里は、画面を見ずに、ぎゅっと握った。
“聞く覚悟”だけを、胸に残して。
スマートフォンの画面には、嵩からの短いメッセージ。
《少し歩くけど、いい?
前に話した、あの場所》
“あの場所”。
それだけで、胸の奥が静かに鳴った。
(覚えてたんだ)
具体的な名前はない。
でも、どこかは分かる。
仕事で泣きそうになった日。
「大嫌い」と言う元気すらなくて、
ただ黙って隣に立ってもらった場所。
朱里はスマートフォンをポケットにしまい、歩き出す。
駅前の明るさを抜け、
人通りの少ない道へ。
足音が、自分のものだけになる。
(……逃げたいわけじゃない)
でも、軽くもない。
今夜、嵩は何かを話す。
それだけは分かっている。
転勤の話かもしれない。
それ以上かもしれない。
それ以下で終わるかもしれない。
全部、あり得る。
朱里は、自分の手を見た。
少し震えている。
(怖い)
正直な感情が、遅れてやってくる。
言葉を選ぶこと。
言わないことを選ぶこと。
それは、昨日までの自分がやっと辿り着いた場所だった。
でも今日は違う。
今日は、
相手の言葉を受け取る側だ。
(ちゃんと、聞けるかな)
途中、信号待ちで立ち止まる。
赤。
向こう側に、小さな公園が見える。
街灯がひとつ。
ベンチがふたつ。
記憶と、現実が重なる。
朱里は息を吸い、ゆっくり吐いた。
(全部は受け止めなくていい)
美鈴の言葉が、ふと浮かぶ。
──決めない選択も、逃げじゃない。
──今のあなたが壊れないことが、一番大事。
朱里は、歩き出す。
信号が青に変わる前から。
“急がない”と決めた足取りで。
公園の入口で、立ち止まる。
まだ、嵩の姿は見えない。
それが、少しだけ救いだった。
(……よし)
朱里は、ベンチの前で立ったまま、空を見上げる。
雲が、ゆっくり流れている。
何も決まっていない夜。
でも。
ここまで来た自分は、
確かに昨日より前にいる。
ポケットの中で、スマートフォンが小さく震えた。
朱里は、画面を見ずに、ぎゅっと握った。
“聞く覚悟”だけを、胸に残して。