本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 三十代の彼はひと目で〝軽そう〟と思わせる雰囲気をまとっていた。くしゃっと無造作にセットされた髪はどこかこなれた印象を与え、ほどよく日焼けした肌が健康的な色をしている。ブランド物のアクセサリーがさりげなく輝き、腕にはゆるく巻かれたブレスレットが揺れている。

 服装もまた、その印象を際立たせていた。開きすぎたシャツの襟元からちらりとネックレスが覗き、細身のパンツは動きやすさを優先したラフなシルエット。足元は高級スニーカーで決めているものの、どこか遊び慣れている雰囲気を醸し出している。

 (ちょっとチャラそうに見えるけど、そのくらいのほうがノリはあるかもしれないわ。女性慣れしているように見えるから、私の話を尻込みせず聞いてくれるかも。まずはチャレンジあるのみね)

 決意を固め、引き結んでいた口を開きかけたそのとき、男性が莉乃のほうを見た。


 「俺の顔になにかついてる?」


 莉乃の視線に気づいていたらしい。男性は肘を突いた手で持ったグラスを揺らしながら、意味ありげな眼差しを向けてきた。


 「そ、そうね……目と鼻と口、かな」


 (って、私なに言ってるの……!)
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