本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】

 凛とした静けさと、ほのかに漂う白檀の香りが莉乃を迎え入れる。
 再びここを訪れるとは想像もしていなかった。それも山城とふたりでなどと。
 前回は山城が先に到着していたが、今日は莉乃のほうが早かった。

 (というか、約束の時間はとうに過ぎてるのに……)

 莉乃が時計を確認してため息をつく。

 (わざと私を待たせているの? それともただ単に仕事が押しているだけ?)

 先に出されたお茶で喉を潤していると、ようやく静かな足音が近づき、引き戸がゆっくり開く。すると、まるで時間を支配しているかのような落ち着いた顔で、山城が姿を見せた。


 「お待たせしましたかな?」
 「大丈夫です。お茶をいただきながら静かな時間を過ごしていました」


 気持ちが急いてしまうが、どうにか穏やかな口調で答える。

 山城は口角を上げるだけに留め、控えていた女将に「すぐに酒と料理を頼みます」と言った。
 やはり契約書だけもらって帰るわけにはいかないようだ。
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