本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
翌日の午後七時、莉乃は青葉に指定されたダイニングバー『IRIS』を目指した。
航希も同行する予定だったが別件の仕事が入り、莉乃ひとりである。『あとでしっかり共有してよ』と何度も念を押す航希も、今回の出店には相当な力の入れようだ。青葉をライバル視している点が若干気にはなるけれど。
航希は青葉と打ち合わせをするたびに、彼の決断力や戦略眼に対して妙な警戒心を抱く。対抗心は隠しているようだが、会話の端々にその意識が滲むのだ。
『夏目青葉はどう言ってた?』
仕事の報告を受けるたびに、彼の意見や行動を細かく確認する。まるで競合企業の市場戦略を分析するかのように。
『彼のやり方はスマートだけど正攻法ばかりじゃない。なにか裏をかいてくるかもしれない』
航希はそう言いながらタブレットを指先で滑らせ、青葉の会社の最新データをチェックしていた。彼自身が見つけてきた人物にもかかわらず。きっとそれは、想定以上に青葉が優れているせいだろう。
少し前の会議では、青葉が提案したマーケティング手法に対し、『一歩先を読んでいるな』と航希がぼそっと呟いたことがある。褒め言葉に聞こえるが、その語調にはどこか競争心が混じっていた。