本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 航希自身、経営の実力には自信を持っているが、青葉の考え方はときに彼の予測を超えてくる。戦略の切り口が鋭く、動きが早い。だからこそ、どこか負けたくないという意識が働くのかもしれない。

 (あとはイケメンなのも気に入らないのよね)

 いつも自分に向けられていた熱視線が、青葉と一緒だと霞んでしまうから。女性には興味がないと言いながら、心の奥では気になっていることを否定しきれていない。

 (弟としては、そこがかわいいところでもあるんだけどね)

 くすっと笑いながら、賑やかな街の中心部に入るちょっと手前にある、レンガ造りの建物の地下へ続く階段を降りていく。木製の扉を開けると、店内は青く神秘的な光で満ちていた。その光源は、フロアをぐるりと囲む大きな水槽である。


 「綺麗……」


 思わず呟いた。実物はホームページの写真よりずっと美しい。
 カラフルな熱帯魚たちが優雅に泳ぐ小さなアクアリウムが、この店の特徴だ。まるで自分が深海の生物になったよう。
 カウンターに十席とテーブル席が五つある比較的広めの店内は、半分ほどが埋まっていた。

 テーブル席で青葉が手を上げる。
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