本日、仕事のために愛されママになります～敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない～【愛され最強ヒロインシリーズ】

　「私も考えたんだけど、できればエリアの変更はしたくないからスケジュールの前倒しで進めたい」
　「であれば早急に不動産との話を詰めたほうがいい。それから……」


　カクテルを飲むのも忘れ、差別化を明確にすること、先行キャンペーンの展開、ルナリアのポジショニングの再確認など青葉との議論は続いていく。

　青葉の判断は、まるで研ぎ澄まされた刃のよう。迷いなく、最短距離で本質を突く。不要な説明を省き、核心へと切り込むその姿勢に莉乃は圧倒され通しだ。


　「とまぁ、現時点ではこんなところだな」


　青葉はノートパソコンを閉じ、向かいの席に戻った。
　彼の言葉に肩を上下させ息を吐く。莉乃はテーブルの上に視線を落としながら小さく笑った。


　「ふぅ……頭使ったな」
　「お疲れ」
　「夏目さんも」


　莉乃がグラスを持つと、青葉も手に取る。視線は変わらず鋭いが、仕事の話が一段落したことで少し肩の力が抜けたように見えた。
　遅ればせながらの乾杯にふたりで笑い合いながら、莉乃はふと父との約束を思い出した。結婚だ。