本日、仕事のために愛されママになります～敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない～【愛され最強ヒロインシリーズ】

　（三度失敗してからあれきりになってたけど……）

　チラッと彼を見た。以前、会話の流れで知ったが、青葉は独身で恋人もいない。完全なるフリーだ。

　（夏目さんだったら、どんな反応をするだろう。……や、でもどっちに転んでも仕事がやりづらくなるわ）

　莉乃は青葉とのこの数週間を思い返す。
　彼との議論は刺激的で楽しい。莉乃が考えていることをぶつけても、しっかり受け止めてくれる。間違いも臆せず訂正してくれる。

　もちろんそれは仕事上だからであって、プライベートはまた違うだろう。

　（いっそビジネスライクに考えてもらうのはどうかな。父との約束を正直に話したら、夏目さんならなにかいいアイデアが浮かぶかも）

　莉乃の中で一気に期待が膨らんでいく。それはまるで静かな湖面に投げ込まれた小さな石が、波紋を広げていくような感覚だった。

　顔を上げ、ゆっくりと青葉の目を真っ直ぐ見据える。


　「夏目さん」


　青葉は「ん？」と言いながら莉乃を見つめ返した。


　「私と結婚しませんか？」