本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 単刀直入に言ってみた。

 グラスをトントンと叩いていた青葉の指が止まる。微かに眉をひそめ、莉乃を凝視する。その目の奥には、予想外の言葉を受け取った戸惑いがあった。


 「……今、結婚と言ったのか?」
 「ええ」


 迷いを振りきるように強く頷く。心臓の鼓動が速くなるのを感じながら、彼の動きを見守った。

 向けられた視線が訝しんでいる。彼は慎重な男だ。衝動的な決断をするタイプではない。だからこそ、この沈黙はただの迷いではないはずだ。

 青葉がどんな返答をするのか固唾を呑む。


 「ふざけているわけではなさそうだ」


 青葉が低い声で問いかける。莉乃の真剣さはしっかり伝わったらしい。


 「もちろん本気よ」
 「なにかワケがあるんだろう。聞かせてくれ」


 尊敬の念はあっても、そこに愛がないのは彼にもわかっているみたいだ。だから、抜き差しならない理由があるに違いないと考えたのだろう。
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