本日、仕事のために愛されママになります～敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない～【愛され最強ヒロインシリーズ】

　「姉貴、最新の売上の傾向値と新商品の提案書、どっちから見る？　あと実店舗の立地もそろそろ本格的に進めないと」


　頼もしい笑顔で莉乃を見る。

　二十八歳の莉乃とは二歳差、二十六歳の副社長兼秘書の航希は、通った鼻筋に知性を感じさせる目元が莉乃とよく似ている。一八〇センチある彼と莉乃には十五センチの身長差があるが、女装をしたら双子でも通るだろうと社内ではもっぱらの噂だ。

　少し癖のある栗色の髪が、窓から射し込む西日で透けた。


　「売上の傾向値ならさっき自分で確認したわ。提案書はあとで見ておくからちょうだい」


　航希が差し出したクリアファイルを受け取って続ける。


　「立地のほうはマーケティングの専門家に相談しようと考えてるんだけど、航希はどう思う？」


　ルナリアはネットでのみ販売してきたが、莉乃の長年の夢はもちろん多数の顧客から実店舗の要望があり、ついにそれが現実のものとなろうとしていた。
　しかし日頃、莉乃や航希が行っている商品開発やマーケティング戦略とは違い、出店となると細かな市場分析や立地の選定など専門的な知識が必要になる。