本日、仕事のために愛されママになります~敏腕社長は契約妻への独占愛を手加減しない~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 「そうだな、たしかにそのほうがいいかも。なにしろルナリアの記念すべき初出店。失敗するわけにはいかないからね」


 航希も気合十分だ。胸の前で拳をぎゅっと握った。

 莉乃の頭の中では、早くも店のイメージが膨らむ。木のぬくもりのある内装、香りが漂うディスプレイ。観葉植物が優雅に並び、店内は窓から入るやわらかな自然光が緑を優しく照らし、まるで森の中にいるかのような感覚を抱く。そんな店が理想だ。

 ふらりと訪れた人が深く息をついたとき、なんだか癒されたと笑ってくれるような空間にしたい。


 「じゃあ、そうしましょ。どこか引き受けてくれるところを探さないとね」
 「俺のほうでいくつかあてがあるから、あたってみるよ」
 「ありがと」
 「ところで急な雨に降られて大変だったろ。迎えに行きたかったけど打ち合わせが長引いてさ」


 航希が窓の外をチラッと横目で見る。午前中は強い雨が降っていたが、もうすっかりあがっている。
 莉乃はドア近くの傘立てを指差した。そこにはブランドのロゴがワンポイント入ったネイビーの傘が立てかけられている。


 「傘、持ってたのか。あ、でも男物?」
 「親切な人が貸してくれたの」
< 5 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop