船瀬さんの彼女、村井さん。
船瀬さんの言葉に、飲みかけていたビールで咽せた。
見下してなんかない。上手く頼れないだけ。見下してるなんて、言わないでほしい。
「要らないってことはないと思うけど…」
「同期なのにさ、壁感じることない?」
「壁ね」
それは私のセリフ。二人だけで仲良くして、プライベートでは付き合っていて。そんなの、私の方が分厚い壁を感じて、二人の邪魔をしちゃいけないって思ってた。
「それは感じるかな」
これは村井さんじゃなくて、押谷としての気持ち。二人がどう思ってるなんて聞きたくなかったけど、この際聞けるところまで聞いてしまいたい。
「だよな?一線引かれてるっていうか。ずっと呼び方さん付けだし、俺ともみじのこと気づいてるのか知らないけど、急に距離を感じるようになったっていうか」
「案外、押谷さんもそう思ってたりしてね。私たちも押谷〝さん〟じゃない」
「まぁな。真面目ってほどじゃないけど、何考えてるか分かんない人」
ほんの少し、悪口を言われている気がして傷ついた。一線を引いているのは事実。船瀬さんと村井さんが付き合い出した頃、二人の雰囲気ですぐに分かった。
邪魔しちゃいけないって思ったし、割って入る気力もない。
「でも押谷さんは頼りがいがあるし、もみじとは違って聡明だよな」
「私と違ってってどういうこと!?失礼なんだけど」