船瀬さんの彼女、村井さん。
「プロジェクトのことで一つ思いついた案があるんだけど、情報収集から始めないといけないの。でもどこから集めたら良いか分からなくて、アドバイスもらえないかなって」
「どんな情報収集?」
船瀬さんの一言で三人でのミニ会議が始まり、それならこのお店に行ったら早いとか、資料室にもあったかもとアドバイスが沢山出てきて、終いには〝そのお店の店主、高校の同級生だから話してみようか?〟と船瀬さんが前に出てくれて、巻き込むとはこういうことかと実感した。
「二人とも、本当に助かる。ありがとう」
「みんなでやったほうが早いじゃん。いつでも言ってよ」
初めからこういう関係性だったら、壁なんか感じずに済んだかもしれない。
解散して自分の席に戻り、村井さんと船瀬さんを見つめる。二人は寄り添って話し込んでいて、昨日あの隣に私が居たんだと思うと、変な気分だ。
もうあの隣に行けることはないと思う。それでも、後悔はもうない。もうあの隣には行かない。行きたくない。
近づいて初めて、自分の立ち位置にも気づけたし。
昨日昼寝をした三十分間で村井さんの体に入ってしまった私。
特別な体験をしたけど不倫のような感覚で、もう二度とない出来事。


