内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です
「室長もリップサービスするんですね」
「サービス? あなたが魅力的な女性であると言ったのが?」
「こういう席で性別を持ち出すのは如何かと」
「ハラスメントに抵触する?」
「もし私が室長の言葉で勘違いしたら、どうするおつもりで? まぁ、わたしはしませんが」

 世間の言うハイスペックに榊原室長は位置付けられる。社内的立場、食事作法や物腰まで完璧。隙が無いのが欠点と言っていい、人間味を感じづらい。

 室長は切り揃えられたステーキから視線を上げた。なんとなく魚を選ぶイメージを抱いており、レアでオーダーしたのが意外だった。
(このステーキ、美味しいには美味しいんだけど、ちょっと硬いな)

 忠告により空気が悪くなる気配、ここは思考を切り替えよう。

「ならば発言の責任を取りましょう」
「—ーは?」
「私はプライベートでも虚偽は好みません。たとえばこちらの肉は少し硬い。火を通し過ぎている気がします」
「……」
 フルコースを優雅に口へ運んでいたものだから、てっきり舌鼓を打っているとばかり。忖度ない感想を言うギャップで笑いが込み上げてきた。
 室長はわたしの堪えた顔を迷子のように眉を下げて探っている。

「松村課長、言いたいことがあるならはっきりお願いします」
「いやいや、責任を取るなんて大袈裟だし、確かに硬いお肉ですが美味しいですよ。それにこういうお店で食べるのは経験になります。室長は本当に実直な方ですね」

 一方、わたしの感想は場を収めるニュアンス。
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