内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です
 ズイッと押し出す丼を喜んで掻き込む姿を眺める。気持ちの良い食べっぷりだが……。

「今月? 先月もピンチって言ってなかったっけ?」
「あ〜、まぁ〜、年頃の男の子は色々と入り用なんですよ。薄給でやりくりが大変です」
 目線が合わなくなり、右へ左へ泳がせる。

「そうなのね」
 露骨に濁されるもこれ以上は追及しないでおく。上司と部下の適切な距離感を保とう。
 経営不振が続くといえ弊社の給料は平均以上、営業部は他部署より収入が高いはずーーそんなお説教は奥歯で潰す。

「それより正義マン、もとい榊原室長が社内恋愛してるの知ってます? 実は俺、その子と最近いい感じなんですよね〜」
「は? それ、どういう状況?」
 タイムリーな話題提供に食い付くというより、引いてしまう。すると会田君は悪びれた様子もなく補足した。

「榊原室長の彼女にアプローチされてるって意味です〜。室長、顔が良くて仕事も出来るけど面白味が無いみたいで。付き合っていても退屈なんじゃないですかねぇ〜」
「……どうして、わたしにその話を?」
 仮に内容が事実だとして。わたしへ打ち明ける意図が読めない。いい感じと表現する事から会田君も満更じゃないんだろう。
< 7 / 28 >

この作品をシェア

pagetop