告発のメヌエット

第46話 企画


 朝のミーティングでは、サラ発案の「ハイマー商会ツアー」の検討がされていた。

「日曜日の学校がない日に、子供用の服を中心に店舗前に並べて売るのはどうでしょうか?」

「そうなると、なんだか安売りをしているようですね。
 子供たちにとってあこがれでなければなりませんので。」

「うーん。僕にはイメージがつかないのです。」

 今まで経験のない子供服の販売。
 客層も初めて迎え入れる、子どもたちとその家族が対象になるので、全くわからなかった。

「サラが、服を着た姿を絵描きに書いてもらうという案を出していたわね。」

 私はアリスに渡された『企画書(案)』を見ていた。

「それをわしにも見せてくれないか?」

「ええ、子どもたちが考えた企画書です。」

 父は笑顔でそれを見ながら、時々声をあげて笑っていた。

「これによると、コレットの服よりも、店員の制服に人気があるようだな。」

「ええ? おばさま、そうなのですか?」

 グランが驚いた様子で尋ねた。

「そうなのよ、特にアニーの姿に女の子達はあこがれているみたいなのよ。」

「では、アニーとサラに店内での案内役を頼んで、『ハイマー商会の店員』の格好ができるように、制服を着てもらうといい。
 その姿の絵姿を描いてもらうのだな?」

「広場にいる似顔絵師に頼むとしても、さばききれないのでは?」

「そうね……それじゃアカデミーの芸術家の学院生に頼むのはどうかしら。
 彼等にもいいお小遣い稼ぎになるでしょうし、この店を知ってもらういい機会になりそうですわね。」

「ところで似顔絵師に頼むと、どれくらいかかるのだ?」

「だいたい10分ほどで書き上げて、5Gです。」

「……結構しますね。1時間で30Gですか。」

「かまいませんよね?」と私は父に尋ねた。

「服が売れれば十分に回収できるではないか。
 まずは広告を出すのと、アカデミーに学院生のアルバイトを募ることだな。
 細かいことはアニーとサラに話を詰めてもらおうか。」

「サラを会議に参加させるのですか?」

「いや、そうではない。
 アリスと一緒にお茶でも飲みながら、サラの意見を聞こう。
 ここではお前は店主なのだから、サラもかしこまってしまうだろう。」

「そうね、そのほうが話しやすいわね。」

「では、二人が学校から帰ったら、アニーとメアリーにお茶会の準備をしてもらおうか。
 そこで子供たちと楽しく『企画書』の打ち合わせをしてくれ。」

「かしこまりました。そのように伝えておきます。」

 トーマスは娘のように可愛がっているサラが、こうして活躍することがとてもうれしそうだった。

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