イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか？

プロローグ

真緒はオフィスの薄暗い一角で、完全に蒼に追い詰められていた。


背中は壁にぴったりと押し付けられ、腕はしっかりと掴まれて頭の上に持ち上げられている。


いつの間にか、自分の逃げ場は完全に消えていた。

「真緒さんは……俺のこと、どう思ってるんですか？！」


蒼の声は真剣そのもので、普段の初々しい笑顔はどこにもなく、目は真緒だけを見据えていた。その瞳の奥には、真緒が想像する以上の熱量が宿っている。

胸の奥がぐっと締め付けられるように熱くなる。蒼の綺麗な顔を目の前に、自分が独占している――そんな感覚に、心臓は早鐘のように打ち始めた。
「お、おちついて……鳴海くん……」
声に出して自分を落ち着けようとするが、震える指先や脳内の混乱は止まらない。

その瞬間、蒼の唇が――まるで迷いもためらいもなく――真緒の唇に落ちてきた。
粗っぽくて、でも熱を帯びたそのキスは、真緒の理性を一気に溶かす。目を見開き、心臓は飛び出しそうになり、思わず息を呑む。


な、なんで……こうなっちゃったの……？！


頭の中で叫びながらも、体は蒼の熱に逆らえない。手の中の温もり、唇の柔らかさ、近すぎる距離……すべてが刺激になり、理性はあっという間に崩れ去っていく。

私、恋愛なんて、とっくにお休みしてたのに……。

それなのに、目の前の蒼の瞳にどんどん吸い込まれていく。

唇を離した瞬間、蒼の呼吸がかすかに荒く、彼の指先が真緒の腕を優しく、でもしっかりと握りしめる。その熱に包まれながら、真緒は深く息を吸い込んだ。

「……す、すみません、止まらなくて……」

甘く切ない予感だけがオフィスの静けさの中に残った。