イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
「……大分年下……だな?」
兄の言葉に、心臓が止まるかと思った。

「ぎくっ!」
私の反応に、横の蒼がちょっと苦笑いを浮かべる。
「……はい」
落ち着いた声。けど、蒼の耳までほんのり赤いのを、私は見逃さなかった。

「うん。でも、すごく頼りになる人なの。仕事も助けてもらってる」
必死にフォローを入れる。自分でも声が上ずってるのが分かった。

「……ふうん」
兄は表情を変えず、ただ短く呟いた。

怖い……!!
心の中で私は頭を抱える。兄の無表情ほど恐ろしいものはない。昔からそうだ。怒っているのか、ただ考えているのか……判断がつかない。

「お前、今度うちにこい」
兄の目が私に向く。
「真緒、連れてこいよ」

「えっ……」
思わず変な声が出る。

兄はそれ以上なにも言わず、スーツ姿の背中を翻してその場を立ち去った。

「…………」
私と蒼は、その場に残されたまま、夜の風に吹かれて立ち尽くした。

「……お兄さん、怖いですね」
蒼がぽつりと呟いた。

「う、うん……昔から、ああなの……」
胃のあたりがきゅっと重くなる。
けれど隣を見ると、蒼はなぜかちょっと嬉しそうに笑っていた。

「じゃあ、近いうちにご挨拶ですね」
「ええええっ!!」
私は、思わず大声をあげてしまった。

「というか……私たち、付き合ってるの……?」
思わず、私は蒼にぶつけてしまった。

蒼は一瞬きょとんとしたあと、迷いなく頷いた。
「俺はそう思ってますけど」
その言葉があまりにも自然すぎて、私の心臓がどきんと跳ねる。

「いつ、行きましょう。おうち」
「いやいやいや、話進めないでーっ!!」
思わず声が裏返る。顔が熱い。

「……私たち付き合うってことでいいの?」
自分でも信じられないくらい、小さな声になっていた。

「はい。俺は」
蒼は真っ直ぐに私を見る。視線から逃げられない。
「真緒さんもいいですよね?」

……だめだ。断れるわけないじゃない。
「……う、う、うん……」

その瞬間、蒼の顔がぱあっと輝いた。
子犬みたいに目をきらきらさせて、とろける笑顔。
彼は抑えきれないみたいに小さく拳を握った。

私まで笑ってしまいそうになる。
でも同時に――「兄のところに連れていかなくちゃ……」
ふわふわした不安も押し寄せてきていた。
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