イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
自分でもはっとした。
この前、帰り際にいいかけたことは、これだったんだ……
彼は、会社の内情を言えなかったんだ。

蒼は立ち尽くしたまま、目を伏せる。
戸惑いと、苦しさと、何かを抱えたような顔。
それだけで、胸がぎゅっと締めつけられる。

分かっている。分かっているのに――

「……ごめんなさい」
ようやく絞り出した蒼の声は、掠れていて、苦しそうで。

「鳴海くんが悪いんじゃないよ」

むしろ、誰よりも頑張ってきた蒼を知っているから。
だからこそ――胸が痛かった。

ちょっと来てください。そう言われて、私と蒼は使っていない会議室に入る。

「……え?」
耳を疑った。

「仕方ないんです」
蒼は苦笑いを浮かべながら、まっすぐ私を見る。
「社内で付き合ってると、同じ部署にいれないんです」

「……はい?」
反射的に聞き返す。
どこかの古いドラマの設定みたいな言葉が、現実に聞こえてきたから。

「……はい、係長から聞いたので」
蒼は真剣そのものだ。

「……この令和の時代に?」
思わず声が裏返る。
そんなルール、今まで聞いたこともなかった。

「はい」
蒼は小さくうなずく。

「いやいやいや、今まで誰も言ってなかったし。聞いたことないぞ……!」
私の中で動揺と困惑がせめぎ合う。
すると、蒼がほんの少し照れくさそうに、でもまっすぐな瞳で続けた。

「だから、仕方ないなと思って。だって、俺たち付き合ってるじゃないですか」

――その一言で、頭の中が真っ白になった。
自分でも、かーっと顔が赤くなるのがわかった。
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