イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?
会社に近い蒼のマンションへ。
久しぶりに来たけれど、相変わらずシンプルで、生活感がほとんどない。
ただ、よく見ると、ちゃんとご飯を食べていない感じがぷんぷんする。ゴミ箱にはコンビニ弁当やカップラーメンの空容器が積み重なっていた。

「うーん…」
私は小さくため息をつきながら、バッグから買い物袋を取り出す。
「何かつくるね」
そう言って、キッチンに立とうとしたその瞬間、背後からぎゅっと抱き締められた。

「だめ。」
蒼の低くて甘い声が耳に届く。肩越しに顔をのぞき込むと、いつものとろける笑顔ではなく、真剣に私だけを見つめている。

「だって…ご飯つくりたいんだけど」
「今日は、真緒と一緒にいるだけで十分だから」
耳元でそう囁かれると、胸がぎゅっと締め付けられる。

後ろから抱きしめられたまま、私は思わず顔を埋める。
「蒼…」
小さくつぶやくと、蒼は肩に頭を寄せてくる。長い間仕事で疲れていたのに、今だけはこの温もりで全部消えてしまいそうだった。

「もう…俺のこと忘れないでね」
蒼の手が腰に回り、私の体をそっと引き寄せる。心臓がどきどきと跳ねる。
「忘れるわけないじゃん…」
私の返事に、彼はにこっと笑い、額を私の髪にすり寄せてくる。

そのまましばらく、二人でぴったりくっついたまま過ごす。キッチンの灯りがほのかに揺れる中、時間が止まったかのように甘い空気だけが流れていく。
「真緒…ずっと、こうしていたい」
「私も…」
素直な気持ちが口をついて出る。

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