イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか?

9

「どうしたの?早いね。」
私は少し驚きながらも、自然に声が出た。

「出張、早めに終えられたから来た。会いたかった。」
蒼の声は柔らかく、でも真剣で、胸の奥にじんわり響く。

「ここ、職場だよ?」
思わず距離を意識して言ってしまう。

「いいでしょ。どうせみんな知ってるよ。」
蒼はにこりと笑い、少し肩をすくめるようにして言った。

確かに、蒼が営業部に異動になったときから、職場ではちょっとした噂が立っていた。
私もそれを知っていて、でも笑いながら許してしまう自分がいた。

「今日は一緒にいられるよ!」
とろけるように優しい笑顔。
その顔を見ていると、早く独り占めしたいという思いが胸に込み上げる。
私ももう、彼に夢中だった。

「これからどうする?夕飯食べに行く?レイトショー行く?それとも、おうちでまったりする?おうちでまったりしよう?」
蒼の言葉が矢継ぎ早に飛んできて、私は思わず吹き出しそうになる。

「早口、早口!」
つい突っ込みを入れてしまった。

「蒼くんがしたいことしよう。」
私がそう言うと、蒼の頬が一気に赤くなった。目をぱちぱちと瞬かせ、言葉に詰まっている。

「……たまに、そういう大胆なことする真緒、好き……」
低くつぶやく声に、胸がぎゅっとなる。

「君はいつも大胆だよ?」
私はくすっと笑いながら、彼の顔を見つめる。
照れた蒼が、少しうつむき加減で微笑む。その仕草に、また胸の奥がくすぐったくなる。

小さな空間に二人だけがいて、互いの呼吸や心音が、まるでシンクロしているかのように感じられる。
私は改めて思う――やっぱり、蒼と一緒にいる時間が、何よりも心地よい。
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