イケメン年下君がメロメロなのは、私って本当ですか？

「……なんで避けるんですか？」
蒼の声は、柔らかいのに力強く、胸の奥まで突き刺さる。

その瞳で、真剣に見つめられると――思わず目をそらしたくなる。
「……その瞳で見ないで……」

まるで敗北宣言をしたかのような、自分の声の小ささに、さらに焦る。

｢だって、私……鳴海くんのこと、何も知らないから……｣

無意識に、ぽろりと口から出てしまったその言葉に、蒼はぱっと顔を輝かせた。

「……え？そういうことですか！」
「……はい？」
「よかった！」
飛びきりの笑顔を浮かべて、蒼はまっすぐに手を差し伸べてきた。

「じゃあ、俺のこと、色々知ってください！　一緒に出掛けましょ？」

言葉も態度も、あまりにも素直で、隠そうともしない。
その無邪気な真剣さに、胸がぎゅっとなる。
――ああ、もう、振り回される展開……！

目の前の笑顔に、頭では理屈を考えようとするけれど、もう私の恋愛経験では、思考回路は機能していない。

「今週の土曜、家まで迎えに行きます！
場所は任せてくださいね！
真緒さんが好きそうなところに連れて行くので！」

蒼は目をきらきらさせて、まるで遠足前の小学生みたいにはしゃいでいた。

――こんな風に彼を夢中にさせているのが、自分だなんて。

大人の女性として、理性を保たねばと思うのに……

「……ああ、もう、なんで私、こんなに翻弄されてるんだろう」

呟くと、蒼はきょとんとした顔で「え？ なんでですか？」と純粋な瞳を向けてくる。

その無垢な顔に、また心の奥の理性がひとつ崩壊していく――。