あこがれドレス ~地味子な私がプリンセス♪
「ありがとう」思わず微笑むと、
女の子も嬉しそうに笑ってくれる。
その笑顔が、胸の奥に灯をともした。
展示の最後。王子役の美咲先輩が、ゆっくりと私に手を差し伸べる。
「姫、行こう」
差し出された手は、舞台の上の仕草そのもの。
私はそっと手を重ね、わずかに頷いた。
カメラのフラッシュが一斉に光り、拍手が湧き起こる。
――その瞬間、私は心の中でそっとつぶやいた。
――私、なれたんだ。あこがれのお姫様に。
展示が終わり、衣装を脱いだ後も、胸の奥にぽっと温かい光が残っていた。
普段の地味な私に戻ったはずなのに、足取りは軽い。
「お疲れさま! 本当にすごくよかったよ」
美咲先輩が笑って肩を軽く叩いてくれる。
「ほら、君って、意外と自信持っていいんじゃない?」
「……はい。少しだけ、そう思えました」
――お姫様になれたのは一日だけかもしれない。
けれど、確かに夢は叶った。
これからの私は、昨日までの私よりも、ほんの少しだけ自分を好きでいられる。
紅茶の香りが漂う文化祭の喧噪の中で、私は静かに胸に刻んだ。
あこがれは、遠い夢じゃない。
手を伸ばせば、きっと少しずつ近づける。