偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
私に一言だけ残して。

「美緒、ジュースでも飲んでて。」

その言葉と共に、あっという間に人混みの中に姿を消す。

忙しい人だということはわかっていたけれど、急に取り残されたような気がして、胸の内が少しだけざわついた。

「……一人になったね。」

肩越しに優しい声がかけられる。

振り返ると、高志さんが私の隣に立っていた。

彼の眼差しは相変わらず穏やかで、どこか懐かしい温度を帯びている。

「バルコニーでも行く?ここのバルコニー、すごく景色がいいんだ。」

その提案に、私はほんのわずかに戸惑いながらも頷いた。

「……はい。」

どうせ、霧島社長はしばらく戻ってこない。

それに、外の空気に触れれば、この緊張した気持ちも少しは落ち着くかもしれない。
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