偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
私と高志さんは、会場の片隅にあるガラスの扉を開けて、静かなバルコニーへと足を運んだ。

夜風が頬を撫でる。都会のビル群が眼下に広がり、煌びやかなネオンが星のように瞬いていた。

静寂と光の中、私は不思議な浮遊感に包まれていた。

「綺麗ですね。」

バルコニーから見下ろす夜景に見惚れていた私の耳に、高志さんの声が響いた。

「だろ?」

彼はいつの間にか、私のすぐ隣に立っていた。

少しだけ肩が触れそうな距離。私は思わず、半歩後ろへ退いた。

「……恋人のフリは、楽しい?」

不意の言葉に、心臓が跳ねた。

「えっ……」と、かすれるような声しか出せない。

高志さんの視線は真っ直ぐで、何かを見抜くような鋭さがあった。

「この前会った時に気づいたよ。ああ、この二人は偽装だって。」

やっぱり——バレていたのだ。
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