偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
意味がわからず問い返すと、社長は柔らかな表情のまま、こう言った。

「実は、君に頼みたいのは“恋人のフリ”なんだ。」

「……恋人のフリ⁉」

思わず声を上げてしまう。

わ、私が――霧島社長の恋人に⁉

「父から結婚を進められているんだ。政略結婚ってやつだ。俺は乗り気じゃない。」

そう静かに言われて、私はごくんと息をのんだ。

「でも……お断りすればいいのでは?」

社長ほどの人なら、無理に従う必要なんてないはず。

「断るにも、理由がいるんだよ。」

霧島社長は、少し困ったように笑った。

けれどその笑みは優しくて、どこか寂しそうにも見えた。

「恋人がいるってことにすれば、父も強引に結婚を押し付けてこない。だから……君に頼みたい。」

なんて大変な立場なんだろう。
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