偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
どうせやるなら、楽しんでしまえばいい。

真面目にやるだけじゃ、損だ。

「うん、そうしよう!」

私は自分に言い聞かせるように声に出して頷いた。

翌朝、出社してすぐ、私は霧島社長に声をかけた。

「……あの、件の件ですが、引き受けます。」

そう言うと、霧島社長は一瞬驚いたような顔をした後、穏やかに微笑んだ。

「ありがとう、月城。」

その笑顔は、今まで見た中でいちばん柔らかくて、優しかった。

――ああ、やっぱり好きだ。

改めてそう思ってしまった自分が、ちょっとだけ悔しい。

そして迎えた週末。

私は霧島社長に迎えに来てもらい、そのまま彼の友人との会食へと向かった。

「高志、こちらが美緒。」

不意に名前を呼び捨てにされて、心臓が跳ねる。

名前で呼ばれるなんて……まるで本当の恋人みたい。
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