偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
混乱しているのが自分でも分かる。

まさか、最初から“外部に見せる演技”まで任されるなんて思っていなかった。

「……あの、一晩だけ考えてもいいですか?」

絞り出すようにそう言うと、社長は静かに頷いた。

「もちろん。だけど――今のところ、君しか頼める相手はいない。」

その一言が、ずしんと胸に響いた。

家に帰ってきて、私はベッドに腰を下ろすと、思わず大きく息を吐いた。

「恋人のフリって……いったい何をすればいいんだろう。」

手を繋ぐ? 名前で呼ぶ? それともキスまで……?

頭の中であらゆる“恋人らしい行動”が浮かんでは消えていく。

何よりも大事なのは、“どう見せるか”じゃない。

本当に恋人に見えること。

その時、ふと心の中から小さな声が聞こえた。

――フリだけでも、霧島社長の恋人になれるなんて、むしろ美味しい。
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