野いちご源氏物語 三七 鈴虫(すずむし)
集まっていた貴族たちがそろってお(とも)をする。
お行列が上皇(じょうこう)様のお住まいに向かって出発した。
源氏(げんじ)(きみ)の乗り物には兵部卿(ひょうぶきょう)(みや)様がご同乗(どうじょう)なさっている。
月が少し高く上って夜が()けていく。
風情(ふぜい)のある空なので、若い貴族たちに笛などをさりげなく吹かせなさった。

上皇様と、上皇待遇(たいぐう)をお受けになっている源氏の君のご対面なので、本来なら重々しい儀式(ぎしき)が行われる。
でも今夜は、ただの源氏の君に戻ったようにすぐさま気軽に参上なさった。
上皇様は驚いてうれしくお思いになる。
三十歳を少し過ぎて、いよいよご立派でお美しく、源氏の君にそっくりでいらっしゃるの。
四年前、(みかど)として(さかり)りのときに突然(くらい)をお()りになって、今は静かにお暮らしであられる。
貴族たちは明け方まで和歌や中国の詩を作りあって楽しんだ。
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