温厚専務の秘密 甘く強引な溺愛
後片付けを二人で終え、波瑠がソファに腰を下ろす。
圭吾は一度書斎へ姿を消し、やがて黒いショッピングバッグを手に戻ってきた。

「……波瑠。開けてごらん」

圭吾が差し出したのは、深い色合いのリボンが結ばれた細長い箱だった。
波瑠はそっと受け取り、震える指先でリボンを解き、包装紙を丁寧に開いていく。

 ふたを開けた瞬間、息をのんだ。
ホワイトゴールドのチェーンに、青紫のタンザナイトが揺れ、その上には小さなダイヤモンドがひとつ光を散らしている。

「……わあ、素敵」
思わず声がこぼれる。
「これ……サファイアですか?」

 圭吾は首を振り、ゆっくりと答えた。
「違う。タンザナイト、というらしい。お前の誕生石だ」

 その目が柔らかく細められる。
「……それに、“波瑠”という名前にも合っていると思って。今朝、選んだんだ」

 胸の奥が一気に熱くなり、波瑠の瞳が潤む。
彼の言葉に込められた想いが、ネックレスよりも眩しく心を照らしていた。

波瑠が潤んだ瞳でネックレスを見つめていると、圭吾が静かに手を伸ばした。
「……貸してみろ。俺がつけてやる」

 箱からネックレスを取り出すと、彼はそっと彼女の背後へ回る。
ホワイトゴールドのチェーンがひんやりと首筋に触れた瞬間、波瑠は小さく息をのんだ。

「……っ」

 圭吾の指先が器用にクラスプを留める。
その間、首筋をかすめる温もりと吐息が、彼女の全身を熱くする。

「よし」
彼が正面へ戻り、鎖骨の上に揺れるタンザナイトを指でそっとなぞった。

「……似合っている」
低く響く声が、まるで囁きのように胸へ落ちてくる。

 波瑠は頬を赤らめ、指先でそっと石に触れた。
「……ありがとうございます。大切にします」

ネックレスを胸に輝かせたまま、波瑠は潤んだ瞳で圭吾を見上げた。
「……どうやってお礼をしたらいいのかわからない」

 圭吾の唇がゆるりと弧を描く。
「お礼なんていらない」

 低い声が、彼女の耳元に落ちる。
「お前がこうして俺のそばにいる。それだけで十分だ」

 胸の奥に熱が広がり、波瑠は言葉を失った。
彼にとって、自分の存在そのものが価値になっている。
その事実が、涙よりも深く彼女の心を揺さぶった。

「波瑠、ほかに誕生日にしてほしいことは?」
圭吾がゆったりと問いかける。

 ネックレスを胸に光らせながら、波瑠は首を振った。
「もう……何もない。嬉しすぎて、どうしていいのかわからない」

 その答えに、圭吾はしばらく彼女を見つめ、目を細めた。

そう言って、彼はゆっくりと手を伸ばし、波瑠の肩をそっと抱き寄せた。
力強いのに、どこまでも優しい。大きな体温が全身を包み込み、波瑠は安心したように目を閉じる。
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