温厚専務の秘密 甘く強引な溺愛
波瑠の胸は、今も早鐘のように鳴っていた。
専務は、もう美咲を思っていない。
その事実を知っただけで、心が熱く揺れる。
彼女はずっと前から圭吾を想っていた。
あれは半年前、会議の後のこと。
置き忘れた資料を取りに、ミーティングルームへ戻ろうとしたときだった。
扉に手をかけた瞬間、中から低い声が聞こえてきた。圭吾と、その秘書の会話だった。
「専務、一応耳に入れさせていただきます。今回のチームに落合という女性がいますが……誰とでも寝る女、媚びを売る女と評判です」
波瑠の足が止まる。心臓が強く打った。
次の瞬間、圭吾の声が鋭く響いた。
「評判ってなんだ? 君は実際にその落合という社員が、そういう振る舞いをしているところを見たのか?」
「い、いえ……ですが……」
食い下がろうとする秘書を、圭吾は一刀両断した。
「人間を知ろうとせず、評判や噂に振り回されたいならそうすればいい。だが、私はそういう人間と関わりたいとは思わない。
評判や噂話は、事実とかけ離れ、時に人を深く傷つける。……今後、そういう話は慎んでくれ。わが社の品格にも関わる」
扉越しに聞いたその言葉に、波瑠は胸を震わせた。
この人は違う。噂に惑わされない。人をまっすぐに見ている。
その瞬間、彼女は恋に落ちたのだ。
けれど同時に思った。
専務が自分を好きになることはない。立場が違う。あの人には、想いを寄せる別の女性がいる。
だからこれは、ただの憧れ。
そう自分に言い聞かせ、気持ちを押し隠してきた。
専務はもう、佐倉さんを思っていない。
それだけで胸が熱くなる。
抑え込んできた想いが、こぼれ出しそうになる。
波瑠はグラスを握りしめ、落ち着かない鼓動を必死に押さえた。
(だめ……これは知られてはいけない気持ち。隠してきたのに……)
けれど、圭吾の優しいまなざしがこちらを向くたびに、息が詰まりそうになる。
“専務”ではなく、“ひとりの男”として彼を意識してしまう。
波瑠は胸のざわめきを抑えきれなかった。
(……専務が戻ってくる前に、ここから出なければ)
立ち上がり、足早にラウンジを出る。
エレベーターホールへ向かい、呼び出しボタンを押した瞬間、
足元がふらついた。
「っ……」
バランスを崩した体を、強い腕が支える。
「……待っていろ、と言ったはずだ」
耳元で響いた低い声に、波瑠の心臓が大きく跳ねる。
圭吾がそこにいた。
温厚そうな微笑を浮かべながらも、その瞳の奥は決して譲らぬ光を宿している。
捕まえられた肩にかかる圧は、彼女を逃がすまいとする意思そのものだった。
専務は、もう美咲を思っていない。
その事実を知っただけで、心が熱く揺れる。
彼女はずっと前から圭吾を想っていた。
あれは半年前、会議の後のこと。
置き忘れた資料を取りに、ミーティングルームへ戻ろうとしたときだった。
扉に手をかけた瞬間、中から低い声が聞こえてきた。圭吾と、その秘書の会話だった。
「専務、一応耳に入れさせていただきます。今回のチームに落合という女性がいますが……誰とでも寝る女、媚びを売る女と評判です」
波瑠の足が止まる。心臓が強く打った。
次の瞬間、圭吾の声が鋭く響いた。
「評判ってなんだ? 君は実際にその落合という社員が、そういう振る舞いをしているところを見たのか?」
「い、いえ……ですが……」
食い下がろうとする秘書を、圭吾は一刀両断した。
「人間を知ろうとせず、評判や噂に振り回されたいならそうすればいい。だが、私はそういう人間と関わりたいとは思わない。
評判や噂話は、事実とかけ離れ、時に人を深く傷つける。……今後、そういう話は慎んでくれ。わが社の品格にも関わる」
扉越しに聞いたその言葉に、波瑠は胸を震わせた。
この人は違う。噂に惑わされない。人をまっすぐに見ている。
その瞬間、彼女は恋に落ちたのだ。
けれど同時に思った。
専務が自分を好きになることはない。立場が違う。あの人には、想いを寄せる別の女性がいる。
だからこれは、ただの憧れ。
そう自分に言い聞かせ、気持ちを押し隠してきた。
専務はもう、佐倉さんを思っていない。
それだけで胸が熱くなる。
抑え込んできた想いが、こぼれ出しそうになる。
波瑠はグラスを握りしめ、落ち着かない鼓動を必死に押さえた。
(だめ……これは知られてはいけない気持ち。隠してきたのに……)
けれど、圭吾の優しいまなざしがこちらを向くたびに、息が詰まりそうになる。
“専務”ではなく、“ひとりの男”として彼を意識してしまう。
波瑠は胸のざわめきを抑えきれなかった。
(……専務が戻ってくる前に、ここから出なければ)
立ち上がり、足早にラウンジを出る。
エレベーターホールへ向かい、呼び出しボタンを押した瞬間、
足元がふらついた。
「っ……」
バランスを崩した体を、強い腕が支える。
「……待っていろ、と言ったはずだ」
耳元で響いた低い声に、波瑠の心臓が大きく跳ねる。
圭吾がそこにいた。
温厚そうな微笑を浮かべながらも、その瞳の奥は決して譲らぬ光を宿している。
捕まえられた肩にかかる圧は、彼女を逃がすまいとする意思そのものだった。