温厚専務の秘密 甘く強引な溺愛
女将の言葉を胸に刻み、圭吾は館を出た。
潮風に吹かれながら石畳を抜け、小道を下ると、やがて視界が開けた。

そこには冬の光を受けてきらめく瀬戸内の海が広がっていた。
穏やかな波が寄せては返し、遠くの水平線は淡く霞んでいる。

その海辺に——ひとりの女性が立っていた。

風に揺れる髪、背筋を伸ばした佇まい。
どれほど遠くても、見間違えるはずがなかった。

「……波瑠」

思わず声が漏れる。
しかし彼女は、水平線を見つめたまま気づかない。

圭吾の胸が熱く震えた。
こみ上げる想いに突き動かされ、足が自然に前へ出る。

「波瑠!!」

声を張り上げ、砂浜を駆け出した。
踏みしめる砂の感触さえも、彼を急かす。

——やっと見つけた。
その背中に追いつくまで、もう決して止まるつもりはなかった。

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