温厚専務の秘密 甘く強引な溺愛
圭吾は唇を離し、頬にかかる波瑠の髪をそっと指先で払った。
耳元に顔を寄せ、低く甘い声で囁く。

「……波瑠。言って」

温厚な声色のままなのに、決して拒めない強さがそこにあった。
彼女の胸の奥に押し込めてきた想いを、やさしく、しかし確実に引き出そうとする圭吾の声。

「……波瑠。言え」
耳元に落ちた低い囁きに、胸の奥が震える。

「……言えません」
波瑠はかすれた声で首を振る。
必死にこらえようとした。これまでずっと“憧れ”として押し隠してきたから。
立場の違いも、噂も、全部……。

だが、圭吾の瞳があまりにも近くて、逃げ場がなくて。
その強さの奥に、優しい熱を感じてしまって。

「……専務が……」
唇から零れた言葉に、自分でも驚く。

「……専務が、好きです」

「……専務が、好きです。ずっと……」

言った途端、波瑠の視界が滲んだ。
半年前、噂を一蹴してくれたあの日から、心の奥にしまい込んできた想い。
憧れだと自分に言い聞かせ、隠し続けてきた気持ちが、ようやく零れ落ちた。

「……ずっと、好きでした」
震える声で重ねると、涙が頬を伝う。

圭吾の目が大きく揺れ、すぐに深い熱を宿す。
「……そうか」
低く掠れた声が、耳元に落ちた。

次の瞬間、彼の唇がふたたび波瑠を捕らえた。
今度の口づけは、彼女の言葉に応えるように熱く、強く。
もう逃げることも、隠すこともできなかった。

圭吾は唇を離し、荒い息を整えながら波瑠を見つめた。
その眼差しには熱と決意が宿っている。

「……抱くぞ。いいな」

低く響く声に、波瑠の胸が大きく震える。
もう逃げられない。けれど…逃げたくなかった。

「……はい」
震えながらも、はっきりと答えた瞬間。

圭吾の表情がわずかに緩む。
次の瞬間、強く抱き寄せられ、再び熱い口づけが降り注いだ。
それは「温厚な専務」の顔ではなく、彼女をひとりの女として求める男の姿だった。

触れられるたびに、波瑠の喉から甘い声が洩れる。
止めようとしても止められない、喜びに震える声。

「……波瑠。俺の名を呼んで」
圭吾の低い囁きが、耳元をかすめた。

潤んだ瞳で見上げながら、か細い声で答える。
「……松田さん」

圭吾の眉がわずかに動いた。
「違う。……圭吾だ」

恥じらいに震えながら唇を開く。
「……圭吾さん……」

「“さん”はいらない」
熱を帯びた声がすぐそばで響く。

波瑠は胸の奥に広がる甘さに耐えきれず、涙混じりに囁いた。
「……圭吾」

その瞬間、圭吾の眼差しがさらに深く燃え上がる。
「それでいい。もう二度と、俺から隠すな」

再び重なる唇は、先ほどよりもずっと熱く、強く。
隠し続けてきた想いが、完全に解き放たれる瞬間だった。

そして、囁きに似た決定的な言葉が落ちた。
「お前はもう、俺のものだ。……波瑠」

潤んだ瞳から、また涙が零れ落ちる。
それは悲しみの涙ではなく、心の奥から溢れる喜びの証だった。

「……はい」
小さく頷くと、圭吾の唇が再び重なり、深く、甘く、何度も彼女を確かめる。

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