らくがきの中の君を、彷徨って見付けてさよならと言って
次の日の朝はとっても寒かった。
息を吐けば白く舞って、頬が冷たく凍てついて、12月ってそんな季節だったっけ?

「おはよ、咲茉」

「千颯…、おはよう」

それなのに千颯は変わらなくて、いつものように家の前で待っていた。

お隣さんだから、学校だって一緒だから、いつもこうして並んで歩いて…


本当に千颯は変わらないの。


あれからずっと部活に行ってない私にも、何も聞かないでこうしていてくれるから。


それが居心地よくて…

私は甘えてた。


「今日さみぃな、2限目体育とか萎えるし」

だから思ってもみなかったの。

「マラソンだぞ、なんで冬ってマラソンなんだろうな誰だよ考えたやつ」

「……。」

「誰が好きで走るんだよ」

「…。」

「咲茉、聞いてんの?」

体が動かなくなる、考えれば考えるほど怖くなる。
足が止まってしまった、見たくもないのに足元ばかり見てしまって…

「聞いてないよ」

きゅっと制服のスカートを掴んだ。

「聞いとけよ、隣で喋ってんだから」

私が止まったから千颯も足を止めて、後ろを振り返る。

声がうまく出せないかもしれない、感情が先走ってうまく言えないかもしれない。だけど黙ったままもいられなくて。

「聞いてない…っ!千颯が海外行くなんて聞いてない!」

無理にでも顔を上げるしかなくて。
大声で叫ぶようにぶつけてしまった。

「…っ」

こんなに寒いのに目元が熱い。ぐわっと熱を帯びて持っていかれそうになる感情にはぁはぁと息をして。

「…千颯、留学するの?」

少しでも瞳が揺れたら涙がこぼれそうだったから。
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