らくがきの中の君を、彷徨って見付けてさよならと言って
「私何も聞いてない、海外行くとか留学…するとか、私聞いてないんだけど…そんな話いつの間に…っ」

あ、やばい。

下を見たらやばい。


上を見なきゃ、でも千颯の顔を見たら…


「行かねぇよ、留学なんか」


俯きそうになった、でもその言葉にピクリと止まってしまって。

あまりにも千颯の声が力強かったから。

「俺は咲茉と美大に行く」

一寸の曇りもなく私を見ていたから。

「え、あの…」

「だから留学は行かない」

どうしよう、私の方が前を見られない。千颯と目を合わせてるのが揺らぎそうになる。

「咲茉も行くんだろ?」

「……。」

何も答えられない、なんて答えたらいいのかわからない。

「咲茉が言ったんだろ!」

“ねぇ千颯も一緒に行かない!?”

夢を見てた、漠然とした夢だった。

まだなんでもできると思ってた、あの頃は。

“じゃあ約束!”

無我夢中で夢も見てたの。


嬉しかったよ、千颯が応えてくれたことがすっごく嬉しかった。


でもどうしてかな、今その話を思い出すと苦しくなる。

あの時の自分を思い出したくない、思い出せないんだよ。


「……。」

「違うのかよ」

「…。」

「なんか言えよ咲茉!!」


言えないよ…!!!


瞳の奥が熱くて痛い。
ジンジンと胸が苦しくて痛い。

「俺はそう決めたんだよ、本気でそう思った…」

千颯の顔を見るのが怖い、どんな顔したらいいかわからなくて。

涙が、ぼたぼたとこぼれ落ちるから。

「咲茉は本気じゃなかったのかよ!」
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