下町育ちのお針子は竜の王に愛される〜戴冠式と光の刺繍〜
「あたしはさ、その~、スカートの丈とのバランス?とか全然わかんないからさ、ニコラが直してくれるならすっごく助かる!」
看板娘なんだからちょっとでも可愛くしなくちゃね、とケイトが笑った、その時だった。
「すすすす、すみませーーーーん!!!」
もの凄い勢いで店のドアが開いた。音に驚いた二人がドアの方を振り返る。
見るとそこには身なりの良い、一人の青年が立っていた。
「あの、こちらに、『シンシア・グローリー』さんはいらっしゃいますか!?」
突風のように現れた、明るい茶色の髪に緑色の瞳の青年。特徴的なのは頭の上でピンと立っている真っ白な兎の耳。
『ハルヴァ』だ。
この世界には人間と動植物、そして、人間と動植物の間の者──通称『ハルヴァ』──がいる。獣に近い見た目をしたハルヴァや、人間とまったく変わらない見た目のハルヴァなど、ハルヴァの容姿は多種多様だ。また、ハルヴァには不思議な能力を持つ者がいると言われているが、真意は定かではない。時に、ハルヴァは偏見の目を向けられる土地もある。人と物が多く行き交う、世界の貿易の中枢であるこのルブゼスタン・ヴォルシス国ではハルヴァは特別珍しい種族ではなかった。
ニコラは作業する手を止めて、恐る恐る尋ねた。
「……シンシア・グローリーさん、ですか?」
「はい!こちらにいらっしゃると聞いて来たのですが!」
青年は明るく答えた。対してニコラの表情は曇る。隣にいるケイトの顔を見た。
「ケイト、シンシア・グローリーって知ってる?」
「え?初めて聞いたけど?」
「えええぇぇえ!?まさかっ!?いない!?!?」
慌てる青年にニコラは申し訳なさそうに言った。
「あの、どこか別の場所と間違えてませんか?」
「いいえ!確かにお針子店『シャルロット』と……!」
「でも、シンシア・グローリーなんて人、知らないしぃ~」
ケイトが悪びれず言う。
「そ、そんなぁ!!」
青年は肩を落とした。同時に彼の頭の兎耳も垂れる。
青年の様子を見てニコラは可哀想になって言った。
「あの、場所はここで間違いではないんですよね?シンシア・グローリーさんについて詳しく聞いてもいいですか?何かわかることがあるかもしれないし……」
青年の表情がパッと明るくなると、垂れていた兎耳も持ち上がった。どうやら彼の気持ちと兎耳は連動しているらしい。
「ちょっとちょっと。ニコラ、怪しい人に優しくするのやめなよ」
「うーん、でも、そんな悪い人に見えないから……」
「それが悪いことに巻き込まれる人の言い分なんだって!」
「あ!申し遅れました!僕は王宮の従者で、ライアン・マグリード・セントジーストって言います。……その、決して怪しい者ではないですっ!!」
慌てて自己紹介するライアンを見て、ニコラは思わず笑みが漏れた。
「はい。大丈夫ですよ。伝わってます」
「ああ、よかったぁ」
ニコラの言葉にライアンは胸を撫で下ろした。
看板娘なんだからちょっとでも可愛くしなくちゃね、とケイトが笑った、その時だった。
「すすすす、すみませーーーーん!!!」
もの凄い勢いで店のドアが開いた。音に驚いた二人がドアの方を振り返る。
見るとそこには身なりの良い、一人の青年が立っていた。
「あの、こちらに、『シンシア・グローリー』さんはいらっしゃいますか!?」
突風のように現れた、明るい茶色の髪に緑色の瞳の青年。特徴的なのは頭の上でピンと立っている真っ白な兎の耳。
『ハルヴァ』だ。
この世界には人間と動植物、そして、人間と動植物の間の者──通称『ハルヴァ』──がいる。獣に近い見た目をしたハルヴァや、人間とまったく変わらない見た目のハルヴァなど、ハルヴァの容姿は多種多様だ。また、ハルヴァには不思議な能力を持つ者がいると言われているが、真意は定かではない。時に、ハルヴァは偏見の目を向けられる土地もある。人と物が多く行き交う、世界の貿易の中枢であるこのルブゼスタン・ヴォルシス国ではハルヴァは特別珍しい種族ではなかった。
ニコラは作業する手を止めて、恐る恐る尋ねた。
「……シンシア・グローリーさん、ですか?」
「はい!こちらにいらっしゃると聞いて来たのですが!」
青年は明るく答えた。対してニコラの表情は曇る。隣にいるケイトの顔を見た。
「ケイト、シンシア・グローリーって知ってる?」
「え?初めて聞いたけど?」
「えええぇぇえ!?まさかっ!?いない!?!?」
慌てる青年にニコラは申し訳なさそうに言った。
「あの、どこか別の場所と間違えてませんか?」
「いいえ!確かにお針子店『シャルロット』と……!」
「でも、シンシア・グローリーなんて人、知らないしぃ~」
ケイトが悪びれず言う。
「そ、そんなぁ!!」
青年は肩を落とした。同時に彼の頭の兎耳も垂れる。
青年の様子を見てニコラは可哀想になって言った。
「あの、場所はここで間違いではないんですよね?シンシア・グローリーさんについて詳しく聞いてもいいですか?何かわかることがあるかもしれないし……」
青年の表情がパッと明るくなると、垂れていた兎耳も持ち上がった。どうやら彼の気持ちと兎耳は連動しているらしい。
「ちょっとちょっと。ニコラ、怪しい人に優しくするのやめなよ」
「うーん、でも、そんな悪い人に見えないから……」
「それが悪いことに巻き込まれる人の言い分なんだって!」
「あ!申し遅れました!僕は王宮の従者で、ライアン・マグリード・セントジーストって言います。……その、決して怪しい者ではないですっ!!」
慌てて自己紹介するライアンを見て、ニコラは思わず笑みが漏れた。
「はい。大丈夫ですよ。伝わってます」
「ああ、よかったぁ」
ニコラの言葉にライアンは胸を撫で下ろした。