溺愛している娘は俺の宝物だった
 3


 昼休み、かなえと二人でいつものように教室で弁当を食べた。

 その後私は、スマホをチェックし、新着メールに気がついた。

「例の?」

「うん」

 覗き込むかなえに、私は苦笑する。

「放課後って……。熱心ね。行くの?」

「今日で今後会うのを断れればって、思っているけど」

「それなら昨日」

「かなえが、昨日だけは怒らせるなって言っていたでしょ?」

「あ、そっか」

 かなえは、苦々しく顔を歪め、ぽりぽりと頭を掻いていた。

「私の事情、話してもいいよね? かなえ」

「すぐわかると思うけど。力ある人みたいだから」

「そうよね」

 私は、堂々とした佇まいの彼を思い出し、かなえの言葉に納得ができていた。

 それに、彼には覚えがある。

 忘れたい、忘れたくないような。

 記憶の中に沈んだ、切甘で陰りがあるもの。

 だからこそ彼の名前は、私は心の中でも、声に出しても、呼びたくない。

 私は、降りかかってきた自分の現実を直面するのがとても怖かった。

 今も昔も、彼からみて私自身が不釣り合いすぎて、真剣に向き合いたい気分にはなれなかった。




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