溺愛している娘は俺の宝物だった
 2


『おっはよっ。お二人さん!』

 陽気な声が、二重に響く。

 顔立ち整った、美貌の少年の二人だった。

 二人は、鏡を映したようにそっくりの双子。

 ただ髪だけが、一人はくせっ毛で、もう一人は直毛だった。

 黒を基調としたブレザー制服姿の二人が、私とかなえの後ろから割り込んできた。

 二人は、かなえと私と同じく小学校から大学までエスカレーター式の学校へ通っている。

 二人は、中学生で学校指定の黒を基調としたブレザーの制服を着ていた。

 私とかなえは、高校生なので茶色を基調とした制服を着ている。

 双子は、近所に住んでいて中学生二年生だけど、同学年より少し大人びている。

「あら、おはよう」

「お、おはよう」

「ゆみの顔色って、何だか悪くない?」 

 かなえの隣にいるくせっ毛の林秀太は、いつもと違う私の様子に気がついたのか、顔を覗き込んでくる。

「そうだよ。どうした?」

 隣に来たもう一人の直毛の秀矢は、私の肩を掴み、額に手を当てようとした。

「大丈夫って」

 すぐさま私は、それを払う。

「心配しているのに、ひどいなあ」

 秀矢は、むっとして目をつり上げ、口を尖らせる。

「少し風邪っぽいのよ」

 かなえは、私の手を取り引っ張って、二人から引き離す。

「そうなの?」

 秀太は、心配そうに顔を歪める。

「そう。だから風邪を移しちゃまずいから、ゆみに近づいたらだめよ」

「休めばよかったじゃないか。無理するなよ」

「そうだよ。ゆみ」

「大丈夫よね? 少しくらいは」

「うん。ほら、遅刻しちゃうから、早く学校へ行こう!」

 私は、かなえの手を握り直し、その場から駆け出した。

< 7 / 17 >

この作品をシェア

pagetop