桜が咲く時まで、生きていたい
夜、お風呂に入った後の女子部屋では、会えなかった分を取り戻すように話をしていた。

瑠花は塾での愚痴や、進路に関する悩みを。千佳は最近は食欲がなくて困っているとか…。

姫奈は病院でのあれやこれやを話した。

三人で話しながら笑い合っていると、そっと扉が開かれた。

顔を覗かせたのは春樹。そしてその後ろには宗一郎と蘇芳もいた。

「なんか楽しそうな声が聞こえたから来ちゃった」

あは。と笑いながら入ってくる春樹も、他の二人ももちろんながらパジャマ姿だ。

普段は目にすることができない無防備な宗一郎の姿にキュンとしてしまう。

そして私たちを囲むように男子たちが座ってくる。

「それで、なんの話をしてたの?」

「女子トークなので秘密です」

ツン、と返す瑠花に不満げな春樹。ここ、意外とお似合いなのでは?

そう言いつつも、お話が再開された。

今度は男子も交えて、この夏にあった出来事を話して、気づけば12時を過ぎていた。

「うわ、もうこんな時間」

「ったく、お前がしょーもない話ばっかするからだろ」

「え、ひどい」

「…しょーもない」

「蘇芳まで俺をいじめるなんて」

なんだかこの三人のやりとりを見ていると、漫才を見ているような気分になる。

みんなで喋っている時も、笑いは絶えなかった。

「それじゃ、俺たちは部屋に戻るから。おやすみ、姫」

みんなに向けてではなく、私に向けてだったことに驚きつつもおやすみ、と返す。

「じゃあまた明日」

蘇芳は何も言わず出て行ってしまったが、手を振っていた。

「うちらも寝よっか」

「明日も遊ぶぞー!」

「そうだね、その前にちょっとわたしトイレ借りてくる」

姫奈が部屋を出た後も、話は盛り上がっていた。そのままお手洗いを借りに行こうと一歩踏み出した時、左足にうまく力が入っていないことに気がついた。

運の悪いことに、ちょうど部屋を出てきた羽田と鉢合わせる。

「っっ!」

「姫奈ちゃん?」

異変に気づいた羽田はすぐに駆け寄り半身を支えてくれる。

これは、素直に話したほうがいいかもしれない。

「ちょっと…左足に力がはいらなくなって…」

「わかった。とりあえず、私の部屋が近いからそっちに入りましょう」

羽田の部屋に入り、椅子に腰掛ける。

「それで、急に?」

「はい…きゅうに…あれ?」

「…これは」

呂律も回りづらくなっている。

「みんなには、いわないでください…」

羽田はしばらく黙った後、ふぅ、と息を吐いた。

「わかった。言わないけど、小牧先生には報告させてもらうよ。それと、もし明日の朝になっても症状が回復していなかったら、すぐに病院に戻る。いいね」

「…わかりました」

力が完全に入らないと言うことはないので、気合と根性でふたりの待つ部屋に戻る。

姫奈が部屋に戻るまで、羽田はこっそりと見守ってくれていた。
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