桜が咲く時まで、生きていたい

夏の終わり

あの後病院に帰りつき、荷解きも終わり一息ついていたところに小牧先生からの呼び出しがあった。

「失礼します」

「おかえり。楽しかったかい?」

「はい。外泊の許可をくださり、ありがとうございます」

「あぁ、なんてことはないさ。まぁ、彼にはあんな言い方したけど、実際彼になら任せられると思ったしね」

あんな言い方とは、と思ったが、あえて聞くことはしなかった。

「それで、羽田から報告があったことだけどね。最近、痺れが出る頻度も多くなっているだろう?」

はい、とは答えなかった。

「この間の検査の数値自体は良かったんだけど、症状が頻繁に出るようでは、医師としては、学校に通わせることはできない」

そう言われることを覚悟してはいたが、想像と現実ではやはり衝撃の大きさが違う。

「ここから先は、ご両親にも聞いてほしいから、続きはまた明日。どうせ昨日今日と若干無理をしたんだろうし、今晩はゆっくり休みなさい」

「…はい」

先生の部屋を出て、後ろ手でそっと扉を閉める。

悔しい。頑張っているのに、治療もちゃんとしているのに。どうして、良くなってくれないんだろう。

数値は良かったはずなのに、どうして症状が出るのか。

「…がっこう、いきたいなぁ…」

ほら、今だってそう。呂律が回っていない。これは、病気の症状だ。

うまく言えない自分が悔しい。うまく動かない手足が悔しい。痺れる体が悔しい…。

その日は夜遅くまで声を殺して泣いていた。

いつ眠ったのかすらもわからない。宗一郎や他の人から来ているメッセージにも返信していない。

看護師さんたちが心配そうに部屋をのぞいていることに気づきもしなかった。
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