桜が咲く時まで、生きていたい
その後、無理が祟ったのか、痺れや力が入らなくなる現象も頻繁に起こり出し、学校を休んでいた。

先生の言っていた通り、徐々に足も動かなくなっていった。

秋も終わり、もうすぐ冬に入る。

今でもみんなは欠かさず病室に足を運んでくれている。

そんなみんなとは裏腹に姫奈の体調は良くなったり悪くなったりを繰り返していた。学校にも行ける日数が少なくなったが、学校に顔を出した時はいつもみんな暖かく受け入れてくれた。

今では完全に足は動かなくなってしまっているため、車椅子生活で、補助が必須だ。

思うようにできないせいで、精神的にもくるものがあった。

夜な夜ななく日もあった。でも、諦めたくはなかった。

だから、頑張っている。

頑張っているけれど、姫奈の頑張りよりも早く、悪化しているのが現状だ。

小牧先生には、もし何か一つ大きく変われば、坂道を転がるように病状が悪化するかもしれないとも言われている。

「姫奈、今日、宗一郎遅くなるって」

「凛ちゃん、きてたんだ」

「私たちもいるよ」

「やっほー!」

女子メンバー、勢揃いだ。

「いやー、冬になってきたねぇ」

「今年のクリスマス、ここでクリスマスパーティーしようと思ってるんだけど、どう?部屋、変わるんでしょ?」

「聞いた聞いたー!豪華になるんだっけ?」

そう、宗一郎一家の申し出があったのだ。両親ともに申し訳ないから、と断っていたのだが、強引に押し切られてしまった。

宗一郎のお父さんは大企業の社長さんだ。

姫奈と初めて会ったあの時から、両親の方には言っていたらしいのだが、いよいよ姫奈が病室から出ることも少なくなりつつあるので、それなら過ごしやすい部屋で過ごしなさいとのことだ。

「そうなの。明後日に移動かな」

「じゃあ明後日は絶対来るね!」

「そうだね。放課後なら大丈夫だと思うけど、お昼過ぎには宗一郎くんのお父さんとお母さんが来る予定」

「じゃあ、いきなり入らないようにしないといけないわね」

すっかり凛も瑠花や千佳とは仲良くなっていて、こうやって一緒に来てくれることも多くなった。

「このお部屋ともさよならかー」

みんなと多くの時間を過ごしたこの部屋にはたくさんの思い出もある。

「なんだかちょっと寂しいな」

そう姫奈がこぼすと、みんなもそう思っていたのか、少ししんみりした空気になる。

「そうだね…」

「でも、お部屋がグレードアップすることはいいことじゃない!宗一郎のお父さんに感謝しなきゃね!さっすが社長!そしてその息子も将来有望だ!」

「どうも、その息子です」

いつの間に入ってきたのかわからなかったが、宗一郎の声が聞こえてきたので一同びっくりした。

「うわ!」

「全く…」

「ノックぐらいしなさいよ!淑女の部屋よ?」

テンポよく言っていく三人にやっぱり仲良いな、と思う。

元気溌剌な千佳。クールビューティーお姉さんの瑠花。そしてちょっぴり強気、面倒見のいい凛。

相性がいいのか、と一人納得していた。

「ま、王子様も来たことだし、私たちは帰りましょうか」

「なぁにが王子様よ!」

「お腹すいたぁー」

ちなみに凛は、姫奈見守り隊のなかでも有名な姫奈のファンだ。

騒がしい人たちが出ていき、宗一郎と二人になる。

「改めて、部屋の件はありがとう」

「それ何回目だ?いいって言ってるだろ。父さんも娘みたいなものだって言ってたし。姫には快適に過ごしてほしいし」

そう、なぜかお父さんからは娘認定され、何かと色々してもらっているのだ。

「そういえば、荷物はまとめ終わってるのか?」

「後ちょっとなの。動けないから、手の空いた時に羽田さんたち看護師さんに手伝ってもらってるけど」

「そうか。じゃあ、今から俺もやる。どこまでやったんだ?」

「ええとね…」

そう言って楽しくおしゃべりしながら荷物をまとめていった。
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