すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 意味がわからない。
 どうしてそんなことをセリスがアベリオに言う必要があるのだろう。
 混乱する私に、アベリオが睨みながら続ける。

「別に遊ぶなとは言っていないんだ。だけど、僕は君が嘘をついたことに失望している」
「ち、違うわ。私は……」
「僕にも会えないほど遊ぶことに熱中していたんだね」
「聞いて。お願いよ、アベリオ。私はずっと家で仕事をしていたのよ」
「じゃあ、どうして僕が会いにきても顔を見せてくれなかったんだ?」
「えっ……?」

 アベリオが私に会いに来ていた?
 いつ、そんなことがあったの?
 私は何も聞いていない。
 まさか、父がわざと私に会わせなかったということ?

 状況が呑み込めず、胸の奥がざわつく。
 婚約者であるアベリオを遠ざけていた父と、私の悪口を吹き込んでいたセリス。
 あまりの衝撃に、視界が揺れて目眩がした。

「……レイラ」

 ふいに名を呼ばれて、どくんと鼓動が打った。
 声のしたほうへ顔を向けると、そこにいたのはセリスだった。

 どこか困ったように眉を寄せ、不安げな表情で私を見ている。
 困惑しているのは私のほうなのに――

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