すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 そうだ。アベリオは父を信じている。
 外面だけは完璧なあの男を。

 女遊びに耽っていようと、酒に溺れていようと、賭博に金を浪費していようと、社交界では慈悲深く朗らかな理想の伯爵を父は演じている。
 その仮面に騙されている人は多い。
 アベリオもそのひとりだったのだ。

「ずっと前から、君には不信感を抱いていた」
「そんな……」
「やはり、君はそういう人間だったのか。セリスから聞いたときには信じられなかったが」
「……セリス?」
「ああ。彼女が泣きながら僕に打ち明けてくれたんだ。君のことを」

 耳を疑った。

 なぜここでセリスの名前が出てくるのだろう。
 父の妹の娘で、私の従妹。
 私のひとつ下の19歳で、私と同じ聖絵師(オーラリスト)だ。

 セリスは頻繁にうちへ出入りしていて、幼い頃から姉妹のように育った。
 父はセリスを溺愛していたから、少し寂しさを感じることはあったけれど、彼女が私に笑顔で接してくれるから信頼している。
 貴族学院でも仲良しの姉妹のようだと周囲に言われるほどだ。

「セリスが、何を言ったの……?」
「レイラは仕事だと言って家に籠もっているけど、本当は遊び歩いているんだって。仕事の依頼もほとんどセリスに押し付けているんだろう?」

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