すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 庭園は色とりどりの花々が優雅に咲き誇っていた。
 真紅の薔薇は燃えるような鮮やかさを放ち、淡いピンクや白の花々がやわらかく光を受けて風に揺れる。
 空は澄んだ青をして、ふわっとした雲が少しばかり浮かんでいる。

 世界の色を目にすると、たまらなく筆を持ちたくなる。
 今すぐにでも頭の中では描けるというのに、それが叶わない切なさに、胸がぎゅっと締めつけられる。


「レイラ、こちらよ」

 テラステーブルからエレノア様が手を振っていた。
 私は少し速足でそちらへ向かう。

「遅くなりました」
「いいのよ。私が嬉しくて早く来てしまったの」


 白いガーデンテーブルと椅子には、ケーキや焼き菓子が並べられる。
 私が着席すると、傍らで侍女が香り豊かなお茶を淹れてくれた。
 ひと口含むと、ジンジャーのぴりっとした刺激とシナモンの甘い香りが口の中に広がり、体の奥までほぐれるような感覚がした。

「この国のお茶は口に合うかしら?」
「ええ。とても美味しいです」
「よかったわ。健康にとてもいいのよ。おかげで私は足以外は元気なの」

 エレノア様のそばにはいつも持ち歩いている杖が置かれている。
 私はふとエリオスのことを思い浮かべた。

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